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【コラム】 北米の貨物列車について
 

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今年の初夏に北米を訪れた際に貨物列車も記録した。
写真を交えつつ、圧倒的長さと輸送力を誇る北米の貨物列車を紹介する。


ダブルスタック・長編成の大迫力が特徴的なアメリカのコンテナ貨物列車。
編成長が1マイル(1.6km)以上に及び、"マイルトレイン"という呼称も。画角に収まらないほど長い。


1. 鉄道貨物輸送の状況

鉄道は北米において主要な貨物輸送手段の一つである。輸送量を貨物輸送の長さと重量に換算すると、米国の貨物輸送の約 28 %を占めている。この輸送量は全世界1位で、日本の125倍の規模に相当する。(米国:2,524,585百万トンキロ、日本:20,255百万トンキロ。国際統計格付けセンターより)。主な種類は、石炭、化学薬品、農産物といったバルク貨物のほか、コンテナによるインターモーダル貨物輸送、自動車輸送などがある。


米国内の貨物輸送量の内訳(トンマイル換算) ※アメリカ連邦鉄道局より。


路線網は、米国内だけでも約14万マイルにも及ぶ。米国内の大型トラックが通行可能な高速道路が約20万マイルであり、その7割近くに匹敵する長さの路線網を有している点を見ても、輸送網が米国内でどれほど発達しているかが窺える。
貨物鉄道の多くは、民間鉄道会社が所有・維持する設備で運営されている。特に、1980年に鉄道産業の規制緩和に関するスタガーズ鉄道法が成立したことで、鉄道運賃の設定や荷主との運送契約の自由化が実現し、営業の合理化・サービスの向上が進んだ。現在は、鉄道走行距離の7割をClass Iの7つの事業者(BNSF Railway, Canadian National, Canadian Pacific, CSX Transportation, Kansas City Southern Railway, Norfolk Southern, Union Pacific Railroad)が占めている。

北米の主要な貨物鉄道路線網 ※Maryland Mattersより。

続いて、輸送量について見ていく。

北米の貨物鉄道路線網と輸送量。※アメリカ鉄道連邦局より。


輸送密度に着目すると、内陸部やアメリカの西海岸〜東海岸を結ぶ線路の輸送密度が高いことが窺える。
西側に比べ東側の方が、都市も多く路線網が細かく密になっており、様々な地域へ貨物輸送が行き届いている。しかしながら、東海岸は鉄道輸送距離が比較的短く、インターモーダル鉄道輸送の利用増に結びつきにくい、といった事情もある。


2. 貨物列車の概要

アメリカで走っている貨物列車を大まかに紹介する。画像は筆者がカリフォルニア州内の荒野(上記の路線図では緑太線のエリア)で撮影した。体感的には30分~1時間半おきくらいに来た。


バルク貨物。有蓋車やタンク、ホッパー車など様々。新型のホッパー車やタンク車の導入により、鉄道貨車の平均容量は2000 年には約93トンだったが、2016年には105トンに拡大した。


自動車運搬貨物。北米では、屋根や両側面が囲われた有蓋車のような貨車を用いている。周囲を覆っているのは、飛んでくる破片類や天候、盗難、いたずらによる落書き・破損等による被害を防ぐためである。(治安面の問題が大きい模様)
内部は2段や3段構造にでき、最大クラスの貨車(AutoMax)であれば1両に20台以上の自動車を積載することも可能。



コンテナ貨物。ダブルスタック・2段積みが基本。また、トレーラーを積載し運ぶものも。

また、貨物列車の併結のような形態でも運行される。コンテナ貨物列車に多く見られるが、中にはコンテナ貨物列車+タンク専用貨物列車といったパターンも見かけた。

機関車の重連は当たり前。北米では"貨物列車の重連"も。


3. 貨物列車の輸送力

では、実際にどれだけの貨物を積載しているのだろうか。筆者が撮影した貨物列車の一例からみていきたい。


機関車3重連牽引によるコンテナ貨物列車。53ftのコンテナが大量に積載されている。


この貨物列車に積載されているコンテナの個数と輸送力を計算してみた。

ダブルスタックで103両編成...。日本の貨物列車は最長26両編成であることを踏まえると、文字通り桁違いの輸送力である。
参考としてTEU (Twenty-foot Equivalent Unit。20フィートの海上コンテナに換算した荷物の量)で換算した値も計算した。


TEU換算できるレベルの輸送力であるため、日本の貨物輸送の場合、鉄道よりも船の方がイメージを掴みやすい。

日本国内では海コンの鉄道輸送が主流ではないため厳密な比較は難しいが、スケールの違いを改めて認識する。
内航船1隻分に相当するコンテナが列車となって走っているため、編成長がマイルクラスになるのも頷ける。


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続いて、下記のトレーラーとコンテナの混載貨物列車を見てみる。

機関車6重連が131両の貨車を牽引する長大編成である。

この列車の特徴として、トレーラーが多数積載されている点が挙げられる。アメリカでは国内輸送用として48ft以上(48ft, 53ft, 60ft)のトレーラーや28ftのセミトレーラーも活躍しており、鉄道輸送も行われている。

UPSなど主要な物流業者のトレーラーが鉄道で運ばれる。


この編成の内訳は以下。

トレーラーが多いということもあり、今度はシャーシ基準で算出した。(40ft超級トレーラーを1台と仮定)


トレーラーを基準に計算したので、ここではRORO船と比較してみる。

シャーシの長さが異なるため厳密な比較を行うことはできないが、内航の大型RORO船1隻分程度の荷物を1編成で運んでいる計算になる。


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なお、上記に掲げたコンテナは"標準的な"貨物列車である。長い列車は200両超クラスのものも走っている。
筆者は動画として記録はしていないため、外部の動画を参考として掲載する。

なお動画冒頭の貨物列車は249両であった。TEU換算で1000TEU近くになる。日中韓など東アジア圏内を結ぶコンテナ船1隻相当である。



コンテナ同様、他の貨物列車も同程度の輸送能力を持っている。こちらも、内航やアジア圏内を行き来するバラ積み船やタンカーに迫る規模である。(そりゃここまで長くなりますわ...)




【参考】
Freight Rail Overview ー U.S. Department of Transportation, Federal Railroad Administration
世界・鉄道貨物輸送量ランキング ー 国際統計格付けセンター
米国における物流動向 ー 日本貿易振興機構(ジェトロ) ヒューストン事務所 (2021年3月)
アメリカ合衆国運輸事情 ー 国土交通省


・ご意見・お問い合わせなどはメールまたはtwitter(@usenoforklifts)まで。

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